動物病院アニマルプラス
完全予約制 / 土日祝も診察
  • 診療時間
    月~土   9:00〜12:00/16:30〜19:30
    水・日・祝 9:00〜17:00
  • 休診日
    年末年始
  • 往診・手術
    13:30〜16:30

蛋白漏出性腸症

動物の種類
年齢 10歳
診療科目
症状 特になし(健診の血液検査にて低蛋白血症が見つかる)

症状概要

特に調子に変化はなかったが、定期健診にて低蛋白血症が見つかる。 尿検査、肝機能検査には著変がなかったため、腸管からの漏出を疑い内視鏡にて腸管の生検を行い病理検査を実施。(検査結果が出揃うまでの間に、軟便が始まる) 検査結果から、炎症性腸疾患に伴う低蛋白血症と診断し、治療を開始。

治療方法

ステロイドや免疫抑制剤による治療を開始。治療開始当初は反応が乏しかったが、薬剤を増量することにより血中の蛋白(アルブミン)を維持。その後、ステロイドの漸減を試みるが、アルブミン値を維持できずステロイドの減量が困難だったためリンパ管拡張症の併発を考慮してウルトラローファット食による食事療法を開始。 食事療法の併用により、ステロイドの減量ができるようになり目標量まで減量できた。

治療・術後経過

低蛋白血症を起こす原因は、肝不全、蛋白喪失性腎症、蛋白漏出性腸症、重度皮膚疾患などです。本症例では、肝不全、蛋白喪失性腎症が除外できたことと(肝不全、蛋白喪失性腎症は外見上症状がないことが多い)他に症状がないことから蛋白漏出性腸症を疑いました。 蛋白漏出性腸症は特定の病気ではなく、基礎疾患により血液中のタンパク質が消化管へと漏れてしまう状態を指します。蛋白漏出性腸症をおこす病気は大きく分けると腫瘍性(消化管型リンパ腫)か炎症性(炎症性腸疾患など)です。確定診断は病理検査で行います。消化管型リンパ腫は、画像検査では炎症性の疾患と見分けはつかないことも多く、内視鏡で腸管内を直接見ても大差がないことも珍しくありません。 消化管型リンパ腫の場合は抗がん剤、炎症性腸疾患の治療はステロイド等の免疫抑制剤で治療します。 免疫抑制剤は、当初は多めの量で開始して(副作用を考慮して)状態に応じて減量していきますが通常は生涯投薬が必要なことが多いです。 本症例では、ステロイドの副作用と考えられる重度肝酵素の上昇が見られたため、できるだけ早いステロイドの減量が望ましかったが、アルブミン値が維持できなかったためステロイドの減量ができませんでした。 炎症性腸疾患伴ってリンパ管拡張症が起こる場合があると言われており、その場合は食事療法(低脂肪食)が奏功する場合があると報告されています。食事内容は、反応により程度がありますが、最も厳密な低脂肪食は、ささみと白米(またはポテト)のみの食事です。本症例では、ささみと白米のみのウルトラローファット食が奏功し薬剤の減量に成功しました。