動物病院アニマルプラス
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門脈体循環シャント

動物の種類
年齢 1歳
診療科目
症状 健康診断をしてほしい

症状概要

前日にお迎えしたばかりのワンちゃんの健康診断をしてほしいとのことで来院されました。 食欲はあるとのことでしたが、診察時には診察台の上で横たわったり、ボーッとしているような様子であり、意識状態の低下が疑われました。 血液検査を実施したところ、肝数値(GPT)の軽度上昇、アルブミンの軽度低下およびアンモニアの顕著な上昇が認められました。

治療方法

肝性脳症による意識状態の低下を疑い、静脈点滴、脳圧降下を目的としたマンニトールの静脈投与を実施し、アンモニア値の降下を目的としてラクツロースの内服も開始しました。翌日には食前、食後2時間での総胆汁酸値を測定しましたが、いずれも高値でした。また、画像検査では小肝症が認められました。さらに、肝臓でのアミノ酸代謝異常を調べる検査であり、肝臓疾患の重症度の指標とされている総分岐鎖アミノ酸/チロシンモル比検査を実施したところ、顕著な低下を示しました。したがって、分岐鎖アミノ酸が配合されたサプリメントの内服も開始し、食餌についても肝臓疾患用の療法食を与えるよう指示しました。 その後は上記の内科治療により、神経症状を呈することもなく元気に過ごしてくれていましたが、門脈体循環シャントを含む肝疾患の精査のため、他院でのCT検査をすすめました。検査の結果、脾静脈-後大静脈間に単一のシャント血管が認められ、門脈体循環シャントと診断され、他院にて手術することとなりました。

治療・術後経過

門脈体循環シャントは、門脈系の血管が後大静脈などの体循環の血管に短絡する病気です。門脈血が肝臓を通らずに全身循環へと流入するため、肝臓へ成長因子が行き届かず発達しないことにより、肝機能不全となります。また、消化管で発生するアンモニアなどの毒性物質が門脈血から除去されないため、神経系、消化器系などに異常を来します。門脈体循環シャントは生まれつきのものである先天性と、門脈圧亢進に続発する後天性に分けられます。先天性の場合の臨床症状は若齢から認められることが多く、神経系(発作、ふらつき)、消化器系(嘔吐、流涎)、泌尿器系(尿石症)の症状が一般的です。先天性の場合の根治的治療としては、外科手術によるシャント血管の結紮です。手術が不可能である場合は、臨床徴候のコントロールのために内科治療を実施します。本症例は、肝機能不全に起因した神経症状(肝性脳症)を呈していましたが、内科治療で良好にコントロールすることができました。また、まだお家にお迎えしたばかりの子でしたが、先天性の門脈体循環シャントを早期に発見することができ、治療につなげることができました。