2025.08.13
【注意喚起】重症熱性血小板減少症候群(SFTS)とは
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)とは
SFTSは、SFTSウイルスが原因のダニ媒介感染症です。主な感染源はウイルスを保有するマダニで、発熱・消化器症状・血小板/白血球減少などを起こし、致死率は人で約10〜30%、猫では60~70%とかなり高い恐ろしい病気です(特に高齢者で重症化)。潜伏期間は通常6〜14日。治療は一部で抗ウイルス薬が用いられることがありますが、対症療法が中心で、根本的な治療法はありません。
日本では2013年以降に主に西日本で患者が報告され、近年は年間100例以上。2025年には北海道でも初の症例が公表され、地域を問わず注意が必要です。
猫から人にも感染します
SFTSは「マダニに刺される」だけでなく、発症した犬・猫などの体液に接触して人へ感染した事例が確認されています。猫から人への感染(咬傷・濃厚接触)は複数報告されており、獣医療従事者や飼い主さんがリスク群です。猫では唾液・尿・糞便など複数の体液からウイルスが排泄され得るため、発症動物の取り扱いは特に注意が必要です。

猫での症状の特徴
猫はSFTSに感受性が高く、致死率はおよそ60~70%と報告されています。臨床的には元気・食欲低下、発熱(≧39℃)、黄疸、嘔吐など。血液検査では血小板減少、白血球減少、肝酵素上昇、CK上昇、T-Bil上昇が目立ちます。重症例では急速に悪化し、数日で死亡することもあります。
いつ疑う?飼い主・保護主さんが気づくポイント
- 屋外に出る猫/外と接点がある猫で、上記の症状がある
- 草むら・やぶに入った後から数日〜2週間で発熱・嘔吐などが出た
- 体にダニが付いていた/最近マダニを見た
- 黄疸(歯ぐきや白目が黄色)がある
該当する場合は来院前に電話相談し、指示を受けてください(動物病院側で隔離や防護の準備が必要な場合があります)。
猫のSFTS対策チェックリスト
- マダニに刺されない環境づくり
- 完全室内飼いが理想
- マダニ予防を徹底する(月1回塗布する薬があります)
- 予防薬の継続
- 獣医師推奨のダニ予防薬を定期投与
- 体表のダニは素手で無理に取らず病院で除去(無理に取ると口器が残ったり体液に触れるリスクがあります。動物病院で安全に除去しましょう)
- Q. 室内飼いでも予防薬は必要?
A. 人が持ち込んだダニが猫に付く可能性はゼロではありません。予防薬の定期投与と窓・ベランダでの草むら対策をおすすめします。
- 日々のボディチェック
- ブラッシングしながら耳・首・わき・足の付け根を確認
- ダニ様のしこりを見つけたら触らず病院へ
- 過度なふれあいを控える
- 口移しの給餌、顔を舐めさせる、一緒に布団で寝るなどは避ける
- 触れ合い後は石けんで手洗い
- 猫が体調不良のときの対応
- マスク・手袋着用
- 体液(唾液・尿・便・嘔吐物)に接触しない
- 来院前に電話して指示を受ける
- 野生動物・死体に触れない
飼い主さん自身の身を守るために
- 草地での作業や散策では長袖長ズボン・足首を覆う靴
- 服の上から忌避剤を使用、帰宅後はシャワーと着替え
- ダニに刺された/発熱・嘔吐が出たら医師にSFTSの可能性を伝える
大阪近辺での発生状況
厚生労働省などの統計によると、2025年1月末までに全国でSFTS患者1,058名(死亡116名)が報告され、近畿地方からも発生があります。大阪府では、2017年に1例、2018年に1例、2022年に1例、2024年に4例、2025年に1例が報告され、特に2024年は増加傾向でした。
また、大阪府の公式情報では、体調不良のネコに咬まれて人がSFTSを発症し死亡した事例が紹介されています。屋内飼育のネコではリスクは低いものの、ケア時の注意が呼びかけられています。
猫から獣医師などへの感染事例
- 国内では猫や犬との接触により人がSFTSを発症する事例が複数報告
- 宮崎県ではSFTS発症猫を診療した獣医師や動物看護師が感染し回復
- 2018〜2019年にも猫診療後に獣医師が発症し回復した例あり
- 2025年5月、三重県では猫を診察した獣医師がSFTSを発症し死亡
- マダニ刺咬痕がなくても猫からの感染が疑われる死亡例も報道
まとめ
SFTSは全国的に広がりつつあり、大阪でも発生が確認されています。猫から人、特に獣医療従事者への感染事例もあり、ペットと人双方の健康を守るためには、ダニ予防と発症時の適切な対応が不可欠です。
当院でも、体調不良の外猫さんの診察の場合は、マスクやフェイスガードなどの感染対策を取らせていただく場合がありますのでご理解のほどよろしくお願いします。