動物病院アニマルプラス
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2025.11.07

モーズ軟膏による自壊した腫瘍のケア

モーズ軟膏(Mohs軟膏)を用いた自壊した皮膚腫瘍の外来処置

概要

モーズ軟膏は、局所に塗布して腫瘍組織を固定させる外用の処置法です。外科切除や全身麻酔が難しい場合の代替、また腫瘍の自壊による出血・浸出液・悪臭の緩和を目的として使用されます。

モーズ軟膏とは

モーズ軟膏(Mohs軟膏)は主に塩化亜鉛などを含む組織固定化(タンパク凝固)作用を持つ外用剤です。主にヒトでは、乳がんや皮膚腫瘤が自壊したり皮膚表面に露出した場合の緩和ケアに用いられます。塗布した部位の組織を局所的に壊死させることで、腫瘍の表面が乾いた状態になり、出血や臭いなどが緩和されお家でのケアがしやすくなります、また壊死した組織が乾燥して剥がれることで、表面の腫瘍が縮小することもあります。

作用の仕組み

  1. 軟膏成分が腫瘍表面に浸透し、たんぱく質を凝固させる。
  2. 局所的な壊死が起き、腫瘍の表面が乾燥・崩壊する。
  3. その下で肉芽組織が形成され、徐々に創が閉鎖する場合がある。

使用が検討されるケース

  • 高齢や基礎疾患のため全身麻酔リスクが高く手術が難しい場合
  • 腫瘍が自壊して出血や強い浸出液・悪臭がある場合(緩和目的)
  • 飼い主さまが手術を希望されない場合の代替治療の一つ

メリット

  • 麻酔を必要としない局所処置で対応できることがある
  • 出血や浸出液、悪臭の軽減が期待できるため生活の質(QOL)が向上する
  • 外科切除が困難な症例でも局所コントロールでQOLの維持が図れる可能性がある

    症例紹介(概要)

    (一部画像処理をしていますが、出血などのセンシティブな画像が表示されます。苦手な方はご注意ください)

    指(肉球)に腫瘤が確認され増大傾向があった。高齢で心臓や腎臓の疾患があり麻酔リスクがあったが、将来的なことを考え一度切除(断指術)の手術を行おうとしたが、麻酔導入直後に不整脈が出たため中止。手術の実施は困難なので、消毒や包帯で管理していたが、じわじわと出血が続くのと、消毒などの管理が大変だったのと腫瘤の増大傾向が強かったのでモーズ軟膏処置を提案しました。

    処置の様子

    ↓が処置前の腫瘤です。ぼかしておりますが、表面からじわじわと出血が続いています。飼い主さんが消毒等を頑張っておられたので、膿んだりや臭いは気にならない状態でしたが、先々はそういった面でも心配な状態でした。また、増大傾向が強く腫瘤が日に日に大きくなっていました。


    ↓が軟膏処置中です。腫瘤以外の部分に軟膏が付着しないように保護したうえで腫瘤部分に軟膏を塗布します。モーズ軟膏は市販されたものではなく、また作り置きができないので使用する都度院内で作成します。ヒトでは塗布したまま1日ほど置いたりするようですが、動物の場合は動いたりで長時間の塗布が難しいので腫瘤の場所や性格などにより時間を調整しています。(概ね30分程度でもかなり効果は見られます)
    この後、軟膏を拭きとり洗い流します。


    ↓が軟膏処置後です。表面が乾燥して出血がとまり腫瘤自体はありますが、かなり生活しやくなりました、1週間毎くらいで処置は必要ですが、その1週間の間に表面が脱落し2,3周り縮小することもあります。 この子も1週間で2/3程度に縮小しました。

    モーズ軟膏は手術ができない場合に生活の質を保つために有用な手段ですが、全ての腫瘍に万能というわけではありません。処置の可否や具体的な管理計画は個体差がありますので、必ず獣医師と十分に相談してください。当院では症例に応じた最適な治療計画を一緒に考えます。

    ※本ページは一般的な説明です。具体的な診断・処方は対面診療で行います。