2025.07.24
症例紹介【犬アトピー性皮膚炎】
プロフィール
10歳 柴犬 未避妊雌
症状および経過
以前より両前肢、口部周囲、腹部、眼瞼周囲、耳などの箇所を痒そうにしていました。症状は毎年春と秋に強く、定期的に再発を繰り返していました。また、外耳炎も併発していました。
犬種、痒みのある部位、季節性などから、状況的にアレルギー性皮膚炎(特に犬アトピー性皮膚炎)の可能性を考慮して治療を開始しました。痒みを抑える薬としてアポキルを、補助的な治療として腸活サプリメントのイムノフローラを使用しました。定期的に再発を繰り返すものの症状は良化、以降、良好にコントロールできています。また、薬をアポキルからゼンレリアに変更したところ、より皮膚の状態が改善たため、ゼンレリアに切り換えて経過を見ています。
耳も定期的に掃除を行い、外耳炎もコントロールできています。
解説
【獣医師監修】犬のアトピー性皮膚炎とは?原因・症状・治療法・予防まで徹底解説
犬のアトピー性皮膚炎(Canine Atopic Dermatitis: CAD)は、慢性的なかゆみや皮膚の炎症を特徴とするアレルギー性疾患です。適切な診断と長期的な管理が、ワンちゃんの快適な生活につながります。
犬のアトピー性皮膚炎とは?
犬のアトピー性皮膚炎は、遺伝的な体質を背景に、ダニや花粉、カビなどの環境中のアレルゲンに対して免疫反応が過剰に起こることで発症します。主に若齢期(6か月〜3歳)で発症することが多く、季節性や慢性的な皮膚炎として現れます。
主な症状
- 顔、耳、足先、脇の下などの強いかゆみ
- 皮膚の赤み、炎症
- 繰り返す外耳炎
- 皮膚の色素沈着、苔癬化(皮膚のごわつき)
- 脱毛や湿疹
これらの症状が見られる場合、アトピー性皮膚炎の可能性が高いため、動物病院での早期診断が重要です。
原因と発症のしくみ
アトピー性皮膚炎は以下の要因が複雑に関与して発症します。
- 遺伝的素因(特定犬種に多い)
- 皮膚バリア機能の異常
- 環境アレルゲン(ハウスダスト、カビ、花粉、ダニなど)
- 免疫反応の異常
特に柴犬、フレンチ・ブルドッグ、ゴールデン・レトリバーなどの犬種はリスクが高いとされています。
診断方法
アトピー性皮膚炎は、除外診断と呼ばれる方法で診断されます。他の皮膚病(ノミアレルギー、食物アレルギー、疥癬など)を除外した上で、症状や病歴をもとに診断します。
アレルギー検査(血液検査または皮内反応試験)も補助的に用いられます。
治療法
アトピー性皮膚炎の治療は、根治が難しい慢性疾患であるため、長期的なコントロールが必要です。
- 内服薬(アポキル、ゼンレリア、ステロイド、シクロスポリンなど)
- 注射薬(サイトポイント)
- 外用療法(保湿剤、薬用シャンプー)
- 減感作療法(アレルゲン免疫療法)
- 食事療法(皮膚療法食など)
- 生活環境の改善(掃除・空気清浄機・アレルゲン回避)
治療法は、犬の年齢や症状、飼い主さんの生活スタイルに合わせてカスタマイズする必要があります。
予防と日常ケア
- 室内環境の清潔維持(ハウスダスト対策)
- 定期的なシャンプーと保湿
- アレルゲンの回避(花粉・カビ・ダニ)
- 皮膚の観察と早めの通院
- 獣医師との定期的な相談
皮膚が悪化する前のケアが、長期的な症状の軽減につながります。
よくある質問(Q&A)
Q:アトピー性皮膚炎は完治しますか?
A:残念ながら完治は困難ですが、症状をコントロールすることで快適な生活は可能です。
Q:人にうつる心配はありますか?
A:感染症ではないため人にうつることはありません。
Q:どのくらいの頻度で通院が必要ですか?
A:症状の安定度によりますが、初期は1~2週間ごと、安定後は月1回程度の通院が一般的です。
まとめ
犬のアトピー性皮膚炎は早期発見と継続的なケアがとても大切です。かゆみや皮膚の異常が見られたら、放置せず早めに動物病院を受診してください。
当院では皮膚科疾患にも力を入れており、アトピーに関するご相談も随時承っております。