2025.07.30
症例紹介【繰り返す膿皮症、脂漏症】
プロフィール
15歳 ウエストハイランドホワイトテリア 避妊雌
主な既往歴
以前より外耳炎で通院。アトピー性皮膚炎もあったが、半年ほどは落ち着いていたので投薬は行っていなかったが、背中に膿皮症(細菌性皮膚炎)でてきたので抗生剤治療、また基礎疾患として甲状腺機能低下症があったのでホルモン補充の治療を行ったが、良化と悪化を繰り返すのと、徐々に胸や脇などの脂漏症が悪化してきていた。
症状および経過
甲状腺機能低下症以外に皮膚の悪化要因がないか調べるために血液検査、腹部画像検査を実施→著変なし
週1回程度で抗菌シャンプーを使用していたが、胸や脇などは象ひ様に変化し数日で胸や脇はべたつく感じになっていた。また背中は全体的に膿皮症のような瘡蓋ができて治ってを繰り返していた
→べたつくところはオーツスポットフォーム(抗菌保湿作用のあるふきとりシャンプー)で1日起き程度でふきとってもらうのと、背中を含め保湿をできるだけ毎日しっかりしていただいた。
膿皮症を繰り返す原因としては、根本にアトピー性皮膚炎があるためと判断し、イルノシチニブによる治療を行った。
1ヵ月程度で、背中の膿皮症は治り元通りの綺麗な皮膚に戻ったのと、脂漏症についても10日程度シャンプーをしなくても維持できるようになった。皮膚の肥厚や色素沈着などは残っているが、かゆみもなく良好に維持できています。
解説
犬の皮膚トラブルに保湿剤が効果的な理由とは?
【獣医師が解説】
犬の皮膚トラブルで代表的な「脂漏症」や「アトピー性皮膚炎」。
これらの皮膚疾患はかゆみやフケ、赤み、皮膚のべたつきや乾燥といった症状を引き起こし、ワンちゃんのQOL(生活の質)を大きく下げてしまいます。
近年、これらの症状の改善に保湿剤(スキンケア保湿製品)が非常に注目されています。
では、なぜ保湿がこれほど重要なのでしょうか?
この記事では、犬の脂漏症・アトピー性皮膚炎の原因と保湿剤の役割・効果について獣医師がわかりやすく解説します。
犬の皮膚はとてもデリケート
犬の皮膚は人の皮膚に比べて非常に薄く(角質層が人は21層程度にたいして犬は数層しかありません)、皮脂の分泌も少ないため、乾燥しやすい特徴があります。
また、外的刺激(花粉・ダニ・シャンプー・湿度など)やアレルギーに反応しやすく、バリア機能が弱いことも問題です。
また、アトピー性皮膚炎などを持っている子はもともと皮膚のバリア機能が弱く水分蒸散量も多いと言われています。
保湿剤が皮膚トラブルに効果的な理由
保湿剤が脂漏症やアトピー性皮膚炎に効果的なのは、主に次のような理由からです:
1. バリア機能の回復
犬の皮膚バリアは、外敵から体を守る“盾”のような役割を持っています。
保湿剤を使うことで水分と油分のバランスが整い、皮膚のバリア機能が強化されます。
2. 皮膚の乾燥を防ぐ
乾燥した皮膚はかゆみの原因となり、引っかくことでさらに皮膚が傷つき、悪循環に陥ります。
保湿によって乾燥を防ぎ、かゆみやフケの抑制にもつながります。
3. 抗炎症成分のサポート
多くの保湿剤にはセラミド・アロエ・オメガ脂肪酸・ヒアルロン酸など、皮膚の健康をサポートする成分が含まれています。
これらは炎症を抑える補助的な働きをし、薬だけに頼らないケアが可能になります。
獣医師が推奨する保湿剤の使い方
● 毎日のスキンケアとして取り入れる
シャンプー後だけでなく、日々の保湿スプレーやジェルの使用がおすすめです。基本的には1日1~2回程度が望ましいです。
● 皮膚の状態に合わせて選ぶ
乾燥が強い場合は保湿力の高いクリームやローション、べたつきが気になる場合はジェルタイプなど、症状に応じた製品を選びましょう。
● 使いやすく継続しやすいものを選ぶ
保湿成分については、どれがいいといような共通の見解がでていないのが現状です。ですが、動物は人と違い被毛があり、場所などにより保湿剤を使うのも大変です。
基本的に油分が多いものは保湿力が高いですが、テクスチャーが硬く伸びにくくなるので塗りにくいです。逆にさらっとして水のようなのは毛があっても使いやすいですが、保湿力は劣るためこまめに塗る必要があります。
また、飼い主さんの都合もありますので(毎日続けるのは結構大変です)、しっかり継続していくには、飼い主さんの使用感が一番大切だと思います。
保湿剤は「予防と治療の橋渡し」
犬の脂漏症やアトピー性皮膚炎において、保湿剤は単なる対症療法ではなく、皮膚環境を根本から整えるケアです。
薬物治療と並行して行うことで、症状の再発予防・薬の使用量の軽減にもつながります。
📍 当院では皮膚ケア相談を随時受け付けています!
保湿剤の選び方やシャンプーの頻度など、あなたのワンちゃんに合ったケアプランをご提案します。お気軽にお問い合わせください。
監修獣医師 古荘