2017.08.08
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
獣医師の古荘です。暑い日が続きますが、皆様夏バテなどは大丈夫ですか?個人的には冬より夏派なので、夏の方が元気とよく言われますが、人もワンちゃんも暑い時間帯の運動などは十分お気を付けください。
今回は、最近話題になった重症熱性血小板減少症候群(SFTS)という病気についてお話しようと思います。難しい病名で聞き慣れない方も、「野良猫にかまれたヒトがマダニが媒介する感染症によって亡くなった」というニュースを見た方は多いのではないでしょうか?
この病気がタイトルのSFTSです。比較的新しく判明した感染症ではありますが、以前から国内で発生はあり5年ほど前から毎年60人程の患者が確認されています。以前からある病気が今回急に大きく報道されたのは、この病気は基本的に「マダニを介して感染する」病気(他にも、感染動物の血液に”濃厚に接触”しても感染する可能性は指摘されていましたが…)と言われていましたが、猫からヒトへの感染事例は初めてだからです。
※ただし、ニュース的には、猫から感染したことが確定のように報じられていますが、猫から咬まれたことが原因でSFTSウイルスに感染したかどうかは明らかではないようです。
この病気は、基本的にSFTSウイルスを有する”マダニに咬まれることにより”感染し、発熱、全身倦怠感、消化器症状で重症化し、死亡することもあります。2011年に中国で初めて報告されて以降、国内でも感染が報告されていますが、海外のウイルスとは遺伝子系統が異なるようで、最近海外から侵入したのではなく、かなり以前から国内に根付いていたウイルスのようです。地域によってかなり保有率にかなりバラつきがありますが、シカやイノシシなど野生動物が保有し、マダニが感染を媒介していると言われています。過去の調査では、イヌからはある程度保有が確認されているよう(※狩猟犬中心の調査と思われるので、普通の生活されているワンちゃんが保有しているとは考えないでください)ですが、ネコでの保有は確認されてないそうです。また、ウイルスを保有していても発症することは少ないようで、イヌやネコでの発症の報告はほとんどありません。
まとめると・・・
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- ・基本、屋内で生活するワンちゃんやネコちゃんは心配する必要はありません。
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- ・感染の予防は(ヒトの動物も)、まずは「マダニ」に咬まれないように気をつけることです。
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- ・マダニは、山や草むらなどに多く生息しますので、そういったところに行く子は特にしっかりとマダニ駆除薬を月1回使いましょう(ちなみに、駆除薬はノミ駆除薬と一緒になっています。ノミは一切屋外に出ない子でも付いてしまうことは多いので、皆さん月一回きっちりと予防しましょう)。
- ・外にいるネコちゃんから直接ヒトが感染する可能性は相当レアなケースと思いますが、ゼロとは言えません。発症していない動物からの感染はないと言われていますので、心配な方は、調子の悪い外にいる子との濃厚な接触(血液や体液、便)は注意してください。