2023.12.27
繰り返す膿皮症
膿皮症とは
膿皮症とは、皮膚の細菌感染でほとんどの場合が元々皮膚にいる常在菌と皮膚の免疫力のバランスが崩れておこります。一般的には抗菌薬・シャンプー療法がオーソドックスな治療法として知られています。しかしすべての膿皮症が一般的な治療法で改善・完治するわけではなく、改善しない場合や治療終了により再発を繰り返す場合も珍しくありません。どこかから「もらってきた細菌」が悪さをすのではなく、原因菌は「皮膚に居続ける常在菌」なので、季節の変わり目などで再発を繰り返すことは仕方がないこともありますが、一般皮膚検査で見つけられない隠れた基礎疾患が隠れていることも多く、その原因は多岐にわたり中には検査でわからない異常が隠れているケースもあります。また原因が1つであるとは限らず、根本的な再発防止のためには症例がもつすべての異常に同時に的確なアプローチをしなければいけないこともあります。
繰り返す膿皮症を防ぐために
一般的に甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症(クッシング)、性ホルモン異常などが知られていますが、特異的な症状が見られない場合も多く、診過ごされていることも多いです。
免疫異常の改善
抗生物質により改善するも再発を繰り返す膿皮症の多くはアレルギーではなく「免疫異常」のことがわかってきています。
いわゆる「免疫力」と呼ばれる機能には、腸が特に密接に関係していて、人間では、体の免疫に関係する細胞の約70%から80%が腸に存在し、「腸は第二の脳」とも呼ばれ免疫細胞の調節に腸内細菌が体全体に大きく関わっていていることが知られています。人間の病気では、潰瘍性大腸炎やクローン病といった腸に病変が見られる病気のほか、直接腸とは関係のない肥満や動脈硬化、アレルギー、糖尿病、がん(腸管以外もガンも含む)、リウマチ、認知症などの病気と腸内細菌の関係性について多くの報告がされています。
ワンちゃんに関する研究報告はヒトほど多くありませんが、アトピー性皮膚炎の子に多糖類(腸内細菌のエサとなる。プレバイオティクスとして働く)を与えると、皮膚スコアが改善したり乳酸菌の一種を与えることでアトピーの治療薬を減量、休薬できたという論文や乳酸菌を摂取することで抗酸化力が上がったという論文報告があります。他にも腸内細菌と病気との関係性を示唆する報告はたくさんあり、おそらく人間と同じように腸内細菌が病気に影響を与えている可能性は十分あり、ヒトと同様に様々な病気の予防や改善に効果があることが期待されます。
スキンケア
スキンケアは膿皮症の治療および再発予防のために非常に重要なポイントになりますが、シャンプーだけでは効果が不十分で、保湿の重要性が広く訴えられています。
ワンちゃんでは、まだまだメジャーな健康法としては広まっていませんが、皮膚炎をはじめ多くの病気の予防に腸内環境を整える「腸活」は大きな可能性を秘めています。
腸活にオリゴ糖の王様”ケストース”
ケストースは、オリゴ糖の一種ですが、”オリゴ糖の王様”とも呼ばれ、タマネギやライ麦などの我々が日常的に摂取する野菜や果物にも微量含まれている「希少な」糖質です。ケストースは、砂糖によく似たまろやかな味質(甘味度:30)で、耐熱性にも優れることから食品加工時の利便性が高い食品素材ですが、経口摂取後は消化されることなく消化管下部へと輸送され腸内細菌により選択的に利用されるため、プレバイオティクス(腸内細菌を育てる働きをする)となり得る条件を備えています。
他のオリゴ糖は、いわゆる悪玉菌と呼ばれる体によくない菌のエサにもなり、悪玉菌も増殖してしまいますが、ケストースは、腸内を悪玉菌が活動できない環境に変え善玉菌のみを増やすという作用があります。
また、ケストース以外のオリゴ糖類は「酪酸菌」を増やすことができないのに対し、ケストースは「酪酸菌」を増殖させて腸内の酪酸濃度を上げる働きがあります。
この酪酸菌ですが、最近とても注目されていて、「健康長寿」と関係していると言われています。酪酸菌は腸内で短鎖脂肪酸というものを生成するのですが、免疫担当細胞に働きかけ炎症反応をおさめてくれる等、免疫機能に好影響を与えてくれ、全身に好影響を与えます。逆に短鎖脂肪酸が減少すると、免疫機能に不具合が生じてしまいます。
(腸は最大の免疫器官と言われ、免疫に関わる細胞や抗体全体の約60%が腸に存在し、皮膚や脳といった消化器とは直接関連がなさそうな遠くは離れた臓器にも様々な影響を及ぼすことが近年わかってきています。ヒトでは全身の免疫力やアンチエイジング、(消化管とは関連のない)臓器の腫瘍や、認知症、アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎などといった様々な全身の病気と腸内細菌叢が関連していることがわかってきています。)
では酪酸菌を摂取すればいいかというとそういうわけではなく、食事やサプリメントなどから取り入れた乳酸菌は「通過菌」と呼ばれ、定着することが出来ず、「数日で排出される」と言われています。ですので、単にいい菌を摂取するだけではなく、体の中でいい菌を増やすことが大切と言われています。
このような理由から、ケストースを摂取することで、ヒトでは体にとって様々な効果が期待できると最近注目を集めています。
具体的には。。。
・アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎の改善
(約70%の試験ボランティアがアレルギー症状の改善を実感)
・インスリン抵抗性の悪化を予防(つまり糖尿病の予防)
ケストースは、人間や犬の消化酵素(スクラーゼ)で分解されないずに大腸に届くので、吸収されず甘いのに摂取後も血糖値はほとんど上昇しません。インスリン抵抗性の改善効果に関する成果は 国際科学雑誌Nutrientsにも掲載されています。
・太りにくい体を作る
・肌の保水力アップ
・アンチエイジング
・感染症に対する抵抗力の向上
など、様々な効果があります。
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腸内環境は体の健康の基礎となり、様々な研究が進み今後大きく期待される分野です。
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「FK-23」は東京大学などで犬における効果が研究され、米国皮膚科学会にて効果が報告されている数少ない乳酸菌です。
近年ではプロバイオティクス(善玉菌自体を摂取すること)とプレバイオティクス(善玉菌を育てる物を摂取すること)を併用した方が効果的といわれていることから、ダブルの有効成分としています。
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腸活については、下記の記事もご参照してみてください。