2025.08.18
症例紹介【熱中症】
プロフィール
9歳4ヵ月 チワワ 未避妊雌
主な既往歴
特記すべき持病はなし。
症状および経過
7月の朝6時頃、布団に包まれた状態で動けなくなっているところを飼い主様が発見。
呼吸は荒くぐったりとしており、その後嘔吐もみられたため9時頃に来院。
検査により脱水と肝障害や筋障害が疑われ、冷却しつつ点滴と肝庇護薬などによる対症療法を実施した。
1週間の治療と安静により体調は改善した。
解説
【獣医師監修】犬の熱中症とは?原因・症状・治療法を徹底解説
はじめに
犬の熱中症は、真夏の屋外だけでなく室内でも発生する命に関わる病気です。
体温が急激に上昇し、全身の臓器に障害を起こすことがあります。
今回の症例のように、閉ざされた空間や布団などで熱がこもった状態でも起こり得ます。
熱中症の主な原因
- 高温多湿の環境(真夏の屋外、締め切った室内、車内など)
- 直射日光の下での運動や散歩
- 換気不足
- 冷却できない環境での長時間の滞在
- 短頭種や高齢犬、肥満犬、持病のある犬は高リスク
熱中症に伴い高体温になると、細胞のたんぱく質が変性し全身の臓器が障害を受けます。
その状態が継続すると、脱水なども重なって細胞傷害が深刻になり多臓器不全となります。
主な症状
- 呼吸が荒くなる(口を開けてハァハァする呼吸=パンティングが激しい)
- 元気消失、ふらつき、ぐったりする
- 嘔吐、下痢
- 意識がもうろうとする、けいれん
- 重症ではショック症状や多臓器不全に進行
これらの症状がでた場合は、すぐに動物病院を受診してください。
診断方法
以下のような検査を通じて熱中症を診断します。
- 身体検査(体温測定、脱水の有無)
- 血液検査(肝臓・腎臓の数値、電解質バランス)
- 状態に応じた画像検査
検査結果と併せて、発症時の状況や品種、今までの病歴なども考慮して診断していきます。
治療法
熱中症は一刻を争う緊急疾患です。
- 体温を下げる処置(涼しい場所に移動、冷水で体を濡らす、保冷材で首・脇・鼠径部を冷やす)
- 輸液療法(点滴)で脱水や循環不全の改善
- 必要に応じて肝保護剤や消化器症状への対症療法
- 重症例では酸素吸入や入院管理が必要
予後と再発防止
早期治療で回復は可能ですが、重症例では後遺症や死亡の危険があります。
再発防止には:
- 夏場の室内温度管理(エアコン必須)
- 散歩は涼しい時間帯に行う
- 車内や狭い空間での放置は絶対に避ける
- 高齢犬や持病のある犬は特に注意
まとめ
今回の症例は、飼い主様が早期に異変に気付き冷却処置を行ったことで回復が早かったのだと思われます。
しかし熱中症は症状が進行すると命に関わります。
「呼吸が荒い」「ぐったりしている」などの異変があればすぐに動物病院を受診してください。
当院では、熱中症を含む緊急疾患への対応を行っています。
夏場の健康管理や予防についてもお気軽にご相談ください。
監修:獣医師 内田 動物病院アニマルプラス / 記事制作:2025年8月