動物病院アニマルプラス
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2024.02.04

乳酸菌製剤が奏功した蛋白漏出性腸症の1例

動物の種類
年齢 8歳
診療科目
症状 3歳ごろから低アルブミン血症→蛋白漏出性腸症として他院で治療

症状概要

従前より他院にて蛋白漏出性腸症の治療を実施。長年ステロイドなどで治療を行っていたがアルブミン(Alb)の維持は困難だったとのこと。今年に入って消化器サポート低脂肪(ロイヤルカナン)に食事を変更したところ、良好に維持できていた。しかし、2週間ほど前から下痢が始まり低アルブミン(Alb)が悪化していた。

また、来院時当日朝からは痙攣発作の頻発など神経症状が見られた。

来院時には、重度の低Alb、低Caが見られた。

治療方法

けいれん発作については、低カルシウム血症に伴うものと判断し、治療を行ったところ神経症状は消失し以後良好。

 

低Albについては、ステロイドを増量するとともに、低脂肪食が奏功していることからリンパ管拡張症を伴っている可能性を考慮してウルトラローファット食(白米とササミのみの食事)を開始。(ウルトラローファット食による治療ついては【食事療法が奏功した蛋白漏出性腸症の1例】もご参照ください)

 

これにより一時良化が見られたが、数週間で再度悪化。ステロイドの他に複数の免疫抑制剤などを併用したが効果が乏しく、ステロイドの副作用と考えられる肝障害も発症したため困難な状況となった。

 

犬ではまだ研究報告は少ないが、炎症性腸疾患などでプロバイオティクスやプレバイオティクスの有用性が示唆されており、ヒトの医療でもIBDなどで重要と近年は言われてきているため、標準治療では良化に乏しかったこともあり、当院オリジナル腸活サプリメント(イムノフローラ®)を追加で開始した。

その後、どんどん減少傾向だったAlbが2週間後に上昇(1.0→1.6)に転じ、その後もじわじわと上昇、現在は正常値で維持できている。

治療・術後経過

低蛋白血症を起こす原因は、肝不全、蛋白喪失性腎症、蛋白漏出性腸症、重度皮膚疾患などです。本症例では、肝不全、蛋白喪失性腎症が除外できたことと(肝不全、蛋白喪失性腎症は外見上症状がないことが多い)他に症状がないことから蛋白漏出性腸症を疑いました。 蛋白漏出性腸症は特定の病気ではなく、基礎疾患により血液中のタンパク質が消化管へと漏れてしまう状態を指します。蛋白漏出性腸症をおこす病気は大きく分けると腫瘍性(消化管型リンパ腫)か炎症性(炎症性腸疾患など)です。


確定診断は病理検査で行います。消化管型リンパ腫は、画像検査では炎症性の疾患と見分けはつかないことも多く、内視鏡で腸管内を直接見ても大差がないことも珍しくありません。

消化管型リンパ腫の場合は抗がん剤、炎症性腸疾患の治療はステロイド等の免疫抑制剤で治療します。 免疫抑制剤は、当初は多めの量で開始して(副作用を考慮して)状態に応じて減量していきますが通常は生涯投薬が必要なことが多いです。

本症例では、ステロイドや免疫抑制剤といった標準療法、食事療法での改善が見られず、またステロイドの副作用と考えられる重度肝酵素の上昇が見られたため、かなり難しい状況でした。


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