2026.09.12
健康診断について
「元気だから大丈夫」とは限りません
犬や猫は、体調が悪くても飼い主さんには分かりにくいことがあります。
特に病気の初期段階では、 「食欲がある」「元気に見える」「いつも通り生活している」 ということも少なくありません。
また、獣医師による診察や聴診だけでは発見が難しく、 血液検査を行って初めて疑うことができる病気もあります。
だからこそ、症状が出てから病院へ行くのではなく、 症状がない時から定期的に健康状態を確認しておくこと が大切です。
なぜ「症状がない時」の健康診断が大切なの?
健康診断の大きな目的は、 「病気を見つけること」だけではありません。
今の健康状態を知り、過去の検査結果と比較することで、 小さな変化を早い段階で見つけることにも意味があります。
- 以前よりコレステロールが高くなってきた
- 腎臓の数値に少しずつ変化が出てきた
- 肝臓の数値が以前と変わってきた
- 炎症を示す数値に変化が見られる
- 年齢とともに血液の状態が変化してきた
一回の検査だけでは「正常範囲内」に見える変化でも、 毎年・定期的に検査しているからこそ分かる変化があります。
🐶 犬で注意したい病気
甲状腺機能低下症
「以前より寝ている時間が増えた」 「少し太ってきた」 「毛が薄くなってきた」 「なんとなく活動性が落ちた」
このような変化は、年齢によるものと思われることもあります。
しかし、犬では甲状腺機能低下症が隠れている可能性があります。
甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンが不足することで、 体の代謝が低下する病気です。
犬では比較的よくみられる内分泌疾患の一つで、 元気の低下、体重増加、皮膚や被毛の変化などがみられることがあります。免疫力が落ちるので様々な病気が治りにくくなります。
見た目だけでは分からないことも
甲状腺機能低下症では、典型的な症状がそろう場合もありますが、 全く症状がない子も珍しくありません。
また、 「元気がない」という変化も非常にゆっくり進むと、 飼い主さんが気づきにくいことがあります。
さらに、甲状腺機能低下症では血液検査で コレステロールや中性脂肪などに変化がみられることがありますが、 これらだけで甲状腺機能低下症と診断することはできません。
血液中の甲状腺ホルモンを調べることが重要です。
一般的には T4、fT4、TSHなどを組み合わせて評価 します。
「T4が低い」という結果だけで甲状腺機能低下症と決めつけることはできないため、 他の病気や薬の影響なども含めて獣医師が総合的に判断します。
💡 甲状腺機能低下症が気になる方には
今回の健康診断では、 甲状腺ホルモン(T4・fT4)を追加したコース をご用意しています。
「最近太ってきた」 「活動性が落ちた気がする」 「皮膚や被毛の変化が気になる」 以外にも、高齢の子には、甲状腺の検査を推奨しております。
🐱 猫で特に注意したい病気
心筋症
実は、猫の心臓病では 聴診で異常が聞こえないケースもあります。
特に猫で多くみられる心筋症では、 病気が進行するまで(末期状態や命に関わる状態)症状はありません。
猫の心筋症では、心雑音が認められないことがあります。
そのため、 聴診だけでは心筋症を完全に否定することはできません。
また、先天的や若齢でも心疾患を持っていることは珍しくなく、 飼い主さんが異常に気づかないまま病気が進行する場合があります。
猫の心筋症とは?
心筋症とは、心臓の筋肉である「心筋」に異常が起こる病気の総称です。
猫では特に肥大型心筋症(HCM)が重要で、 心筋が厚くなることで心臓の働きや血液の流れに影響を及ぼします。
病気が進行すると、呼吸が速くなる、呼吸が苦しそうになる、 食欲が低下するなどの症状が出ることがあります。
しかし、こうした症状が出てからではなく、 症状がない段階で心臓の異常を疑うこと ができれば、より早い段階で詳しい検査につなげられます。
🩸 血液検査で「心臓」を調べる意味
猫の健康診断では、 NT-proBNP(心臓バイオマーカー) を利用して、心臓に負担がかかっていないかを調べる方法があります。
NT-proBNPは心筋が受ける負荷などに関連して変化する物質で、 心臓病が疑われる猫の評価や、さらなる検査が必要かどうかを判断する際の 補助的な情報として利用されます。
ただし、NT-proBNPだけで心筋症の有無を確定するものではありません。 結果に異常がある場合には、心エコー検査などのより詳しい検査を検討します。
💡 猫の心臓が気になる方には
今回の健康診断では、 心臓マーカー(NT-proBNP)を含むコース をご用意しています。
特にシニア期の猫では、 「元気だから大丈夫」 「聴診で問題ないから大丈夫」 と考えるだけではなく、 血液検査なども利用して総合的に健康状態を確認することが大切です。
もう一つ、シニア期に考えたい「腫瘍」のチェック
犬や猫も高齢になるほど、腫瘍(がん)は重要な病気の一つになります。
しかし、 一般的な血球計算や生化学検査だけでは、腫瘍があるかどうかを判断できないことがあります。
体の中に腫瘍が存在する可能性はあります。
逆に、血液検査に異常があったとしても、 それだけで「がん」と診断できるわけではありません。
腫瘍の種類や発生場所によっては、 血液検査に変化が出にくい場合もあるためです。
では、腫瘍マーカーにはどんな意味があるのでしょうか?
腫瘍マーカーは、腫瘍に関連して変化する物質などを利用して、 腫瘍の存在を疑うきっかけを作るための検査 です。
従来の血液検査とは異なる視点から健康状態を確認できることが、 一つのメリットです。
腫瘍マーカーは、あくまで補助的な検査です。
検査結果に異常があった場合には、 超音波検査、レントゲン検査、CT検査、細胞診や病理検査など、 必要に応じた追加検査を行って診断につなげます。
反対に、腫瘍マーカーが正常だからといって、 すべての腫瘍が否定できるわけでもありません。
🔎 健康診断で「腫瘍を疑うきっかけ」を増やす
一般的な血液検査では分かりにくい病気についても、 追加検査を組み合わせることで、より多角的に健康状態を確認できます。
特にシニア期の犬・猫では、 「症状がないから検査しない」のではなく、 「症状がない今だからこそ確認しておく」 という考え方も大切です。
今回の健康診断、どのコースを選べばいい?
今回の秋の健康診断では、 基本的な血液検査から、より詳しい検査項目まで、 目的に合わせてコースを選べるようになっています。
基本的な健康状態を確認
年齢や症状に応じて追加検査
必要なら詳しい検査へ
🐶 犬の場合
- まず若い子で健康状態を幅広く確認したい
→ ベーシックコース - 高齢期(8歳程度以上)の子、腎臓・炎症・甲状腺などをより詳しく確認したい
→ Aコース - 心疾患をお持ちの方
→ Bコース
🐱 猫の場合
- まず健康状態を幅広く確認したい
→ ベーシックコース - 心臓の状態も確認したい(確認したことない子は全年齢で推奨)
→ Aコース - 腎臓・炎症などをより詳しく確認したい
→ Aコース - 水をよく飲む、夜鳴きが気になる、痩せてきた
→ T4を含むBコース
健康診断は「病気を探す」だけではありません
犬や猫は、病気があっても初期には 「元気」「食欲がある」「いつも通り」 に見えることがあります。
また、聴診などの身体検査だけでは見つけにくい病気もあります。
だからこそ、定期的な血液検査で現在の健康状態を確認し、 必要に応じて甲状腺ホルモン、心臓マーカー、腫瘍関連検査などを 組み合わせることが大切です。
「まだ元気だから」ではなく、 「元気な今だからこそ」 一度、体の中の状態をチェックしてみませんか?
血液検査は病気の発見や健康状態を確認するための重要な検査ですが、 すべての病気を発見・否定できるものではありません。 検査結果は身体検査や年齢、症状などと合わせて獣医師が総合的に判断します。 異常が認められた場合には、追加の画像検査や精密検査をご提案することがあります。