2026.09.19
🐈【猫のラプロスって、本当に効果あるの?】
「腎臓病の猫にラプロスを飲ませています」
動物病院でもよく聞くようになった「ラプロス」。
💭「実際どのくらい効果があるの?」
💭「飲ませたら腎臓病の進行が止まるの?」
💭「本当に寿命が延びるの?」
と思っている飼い主さんも多いのではないでしょうか。
今回は、ラプロス(一般名:ベラプロストナトリウム)について、実際の臨床研究でどんな結果が出ているのかを見てみます。
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🔬 そもそもラプロスって?
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ラプロスの有効成分はベラプロストナトリウム。
プロスタサイクリン(PGI₂)誘導体の薬で、血管を拡張したり、血小板の凝集を抑えたりする作用があります。
猫のCKDでは、腎臓の微小血管の障害や腎組織の低酸素状態などが、病気の進行に関係すると考えられています。
ベラプロストはこうした血管・循環系に作用することで、腎臓の血流や腎機能の維持に働く可能性が考えられています。
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📚 研究①
「腎機能の悪化を抑えられた?」
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2018年にJournal of Veterinary Internal Medicineに発表された研究では、
🐱 CKDの猫 74頭を対象に、180日間比較しました。
しかも、
✔︎ 無作為化
✔︎ 二重盲検
✔︎ プラセボ対照
という、比較的信頼性の高い研究デザインです。
そして注目されたのが「血清クレアチニン」。
180日後、
🔵 ベラプロスト群
2.4 → 2.5 mg/dL
🔴 プラセボ群
2.8 → 3.2 mg/dL
となりました。
つまり、ベラプロスト群ではクレアチニンがほぼ維持された一方、プラセボ群では上昇しました。
研究では、180日後の群間差は**0.8 mg/dL(95%CI 0.2–1.3)**で、統計学的にも有意でした。
さらに、BUNについても、
ベラプロスト群
40.5 → 43.1 mg/dL
プラセボ群
46.0 → 57.4 mg/dL
となり、ベラプロスト群では上昇が抑えられました。
つまり、
「ラプロスを飲んだ猫では、6か月間で腎機能を示す指標の悪化が抑えられた」
という結果です。
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🍚 食欲やQOLにも変化が?
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この研究では、血液検査だけではなく、食欲や活動性、脱水、飼い主さんによるQOL評価も調べています。
180日目に食欲低下がみられた猫は、
🐱 ベラプロスト群:7%
🐱 プラセボ群:31%
でした。
また、飼い主さんによるQOL評価でも、ベラプロスト群のほうが「改善した」と評価される割合が高くなりました。
ただし、ここは注意が必要です。
「ラプロスが直接食欲を改善する薬」という意味ではありません。
腎機能や尿毒症に関連する状態が変化した結果として、食欲などに影響した可能性があります。
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⏳ じゃあ、寿命も延びる?
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ここは2018年の研究だけでは分かりません。
なぜなら、この研究は「180日間で腎機能がどう変化したか」を主に調べたもので、寿命を延ばす効果を検証する試験ではなかったからです。
そこで2023年に、別の研究が行われました。
IRIS stage 3のCKD猫134頭を対象に、実際の診療記録から、
🐱 ベラプロストを使用した群
🐱 使用しなかった群
の経過を比較しました。
すると、
1年生存率
ベラプロスト群:70.4%
非投与群:45.3%
という結果でした。
また、病気の進行をみた解析では、
ベラプロスト群の中央値18.0か月
非投与群の中央値9.2か月
と、約2倍の差が報告されています。
さらに、死亡リスクについても、ベラプロスト投与群で低かったことが報告されています。
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⚠️ でも「ラプロスで寿命が2倍になった」ではありません
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ここが一番大切です。
2023年の研究は、
無作為化比較試験ではなく、後ろ向きの観察研究です。
つまり、
「ラプロスを飲んだから寿命が延びた」
と、この研究だけから断定することはできません。
ラプロスを投与された猫と、されなかった猫では、もともとの状態や治療内容などに違いがあった可能性があります。
実際、研究者自身も、両群でリンなどの背景因子に差があったことや、血圧・UPCなどの情報が十分ではなかったことを限界として挙げています。
そのため、
❌「ラプロスで寿命が2倍になる」
ではなく、
⭕「ラプロスを使用した猫では、より長い生存期間と関連していた」
と理解するのが正確です。
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🔎 結局、ラプロスって効くの?
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現在ある研究をまとめると、
「腎機能の悪化を抑える可能性は、比較的しっかり示されている」
と言えます。
特に2018年のプラセボ対照RCTでは、180日間の治療によってクレアチニン上昇の抑制が確認されています。
一方で、
「どの猫に使っても明らかに寿命を延ばす」
とまで証明されているわけではありません。
また、ラプロスだけでCKDをコントロールするものでもありません。
腎臓病の治療では、
🍚 腎臓病療法食
💧 脱水への対応
🩺 血圧管理
🧪 タンパク尿への対応
⚖️ リンの管理
💊 吐き気・食欲低下などへの対処
など、その猫の状態に合わせた治療を組み合わせることが重要です。
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🐾 獣医師としてのまとめ
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ラプロスは、
「なんとなく腎臓に良い薬」
ではありません。
猫のCKDを対象としたプラセボ対照RCTで、腎機能の悪化を示すクレアチニン上昇を抑えたというデータがあります。
さらに、実臨床の研究では、ベラプロストを使用した猫で病気の進行や死亡が少なかったことも報告されています。
ただし、寿命への効果についてはまだ観察研究の段階。
だからこそ、
「ラプロスは本当に効果があるの?」
という質問への答えは、
👉 「腎機能の悪化を抑える効果を支持する臨床研究はある。ただし、寿命を延ばす効果まで含めて確実に証明されたわけではない」
が、現在のエビデンスに最も近い答えだと思います。
「うちの猫にも飲ませたほうがいい?」
という場合は、現在のIRISステージ、クレアチニン・SDMA、リン、血圧、UPC、脱水状態などを総合的に評価して、主治医の先生と相談してみてください。
📚 参考文献
Takenaka M, et al. J Vet Intern Med. 2018;32:236–248.
A Double-blind, Placebo-controlled, Multicenter, Prospective, Randomized Study of Beraprost Sodium Treatment for Cats with Chronic Kidney Disease.
Ito H, et al. Animals. 2023;13:459.
Beraprost and Overall Survival in Cats with Chronic Kidney Disease.
