2026.09.18
🐈【猫の腎性貧血に、新しい治療薬】
慢性腎臓病(CKD)の猫では、病気の進行に伴って「腎性貧血」がみられることがあります。
腎性貧血は、軽度であれば目立った症状がないことも少なくありません。
そのため、飼い主さんが貧血に気づくことは難しく、血液検査で初めて見つかることもあります。
今回は、そんな猫の腎性貧血に対して新しく登場した
「バレンジン」
について、最新の研究をもとに解説します。
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🔬 バレンジンってどんな薬?
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バレンジンの有効成分はモリデュスタット。
「HIF-PH阻害薬」というタイプの薬です。
腎臓病では、赤血球を作るために重要なホルモン「エリスロポエチン(EPO)」の産生が低下し、貧血が起こります。
モリデュスタットは、
HIF-PHを阻害
↓
HIFが働きやすくなる
↓
体内でのEPO産生を促す
↓
赤血球の産生を促進する
という仕組みで作用します。
つまり、EPOそのものを外から補充するのではなく、猫自身のEPO産生を利用して造血を促す薬です。
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💉 EPOを注射する治療と何が違う?
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これまで猫の腎性貧血では、ダルベポエチンなどの「赤血球造血刺激因子(ESA)」を注射する治療が行われてきました。
ESAは、EPOの作用を持つ薬を体外から投与する方法です。
一方、バレンジンはEPOを直接投与せず、体内でEPOを作る仕組みを利用します。
この違いから、バレンジンにはいくつか注目されているメリットがあります。
① 自宅で投薬できる
バレンジンは経口薬なので、基本的には飼い主さんが自宅で投与できます。
定期的な注射のために通院する必要がないことは、猫にとっても飼い主さんにとっても大きなメリットになり得ます。
② 抗EPO抗体による問題を起こしにくいと考えられる
EPO製剤では、まれに抗EPO抗体が産生され、薬が効きにくくなったり、赤芽球癆(PRCA)という重篤な造血障害につながったりすることがあります。
バレンジンはEPOそのものを外から投与する薬ではないため、こうした抗EPO抗体の問題とは異なる仕組みで治療できます。
ただし、「バレンジンでは薬剤耐性が絶対に起こらない」という意味ではありません。
あくまで、EPO製剤で問題となる抗EPO抗体による治療抵抗性とは異なる治療法であるという点が重要です。
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📚 最新の研究では?
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2026年に発表された研究では、CKDに伴う貧血の猫75頭を対象に、モリデュスタットと対照薬を比較したランダム化比較試験が行われました。
28日後にヘマトクリット(HCT)が4ポイント以上上昇した猫の割合は、
🐱 モリデュスタット群:68%
🐱 対照群:17%
でした。
つまり、モリデュスタットを投与した猫では、対照群と比較して貧血の改善が多く認められました。
さらに、その後20週間の継続試験では、貧血の状態に応じて28日間の投与サイクルを繰り返す方法が検討され、反復投与の安全性についても評価されています。
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⚠️ では、EPO注射より優れている?
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ここは非常に重要です。
現時点では「バレンジンのほうがEPO製剤より優れている」とは言えません。
今回紹介した研究は、モリデュスタットと対照群を比較したもので、ダルベポエチンなどのESAと直接比較した試験ではありません。
そのため、
「どちらがより効くのか」
「どちらがより長く効果が続くのか」
「どちらがより安全なのか」
については、今後さらに研究が必要です。実際、現在のレビューでも、猫においてHIF-PH阻害薬がダルベポエチンなどのESAより有効かどうかは不明とされています。
バレンジンの大きな特徴は、
💊 EPOを直接投与するのではなく、内因性EPOの産生を促すこと
🏠 自宅で経口投与できること
そして、
🩸 EPO製剤で問題となる抗EPO抗体による治療抵抗性とは異なるアプローチであること
です。
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🐾 どんな猫が治療対象になる?
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「腎臓病がある=バレンジンを使う」
というわけではありません。
まず、本当に腎性貧血なのかを確認することが重要です。
血液検査で貧血の程度を確認し、鉄欠乏、出血、炎症など、ほかの原因がないかも考慮します。
また、治療を開始した後もHCT/PCVなどを定期的に確認し、貧血が改善しているか、赤血球が増えすぎていないかをチェックする必要があります。
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🔎 まとめ
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バレンジンは、猫の腎性貧血に対する新しい治療選択肢です。
✔︎ HIF-PH阻害薬として内因性EPOの産生を促す
✔︎ EPO製剤とは異なる作用機序
✔︎ 経口薬なので自宅で投与できる
✔︎ EPO製剤で問題となる抗EPO抗体とは異なるアプローチ
✔︎ 最新の臨床研究で貧血改善効果が確認されている
✔︎ 一方で、ESAとの優劣についてはまだ分かっていない
「新しい薬だから、従来の注射より優れている」
ということではありません。
それぞれの治療法の特徴を理解したうえで、その猫に合った方法を選択することが大切です。
今後、実際の臨床現場でどのような猫に、どのタイミングでバレンジンを使用するのが最適なのか、さらにデータが蓄積されていくことが期待されます。
